COLUMN

第11話 かすみの山

 むかしむかしのことでありました。
 それは、ほんとうにむかしむかしのことでありました。
 自然は、今の世の中では思いもおよばないおそろしいことのくり返し が続いておりました。
 地震、大雨、大風、大水。この母なる大地がしっかりと落ちつくまで には当然うけなければならない仕打ちだったのでありましょう。
 突然に、はるかかなたの山が爆発したかと思いますと、またその手前 の山が、というように。
 それは幼ない子供が駄々をこねるように、見さかいもなく、ところか まわず、際限もなく続いていたのでありました。
 そのころは、半田の山里も、もう木がしげり、小川が流れておりまし た。
 人々は、ほそぼそながら生活をつづけておりました。
 西の方には、いくつかの大きな山がそそり立っておりました。それは まだ出来てから間もない山でありました。
 だから、どれも岩はだがむき出しのはだか山であり、巨人がどこと石 を不器用にあつめておったてたような荒々しい姿でありました。
 いつも、上の方は、雲におおわれておりました。
 下からながめますと、かすみがかかったようにも見えました。
 それで、
 『かすみの山』
と呼ばれ、あがめられ、おそれられておりました。
 地震などがありますと、
 『ガラ、ガラ、ガラ、ガラ。』
と石のくずれるのが土煙りでわかる。そんな日もありました。
 ある朝の早くのことでありました。
 突然耳をつんざくような地鳴りがしました。するとかすみの山のくず れるのが見え、やがて土煙りがあたりをたちこめました。
 それは、いく日もつづきました。いつ陽が昇りいつ沈んだかさえわか らないくらいでありました。
 いく日経ったでありましょう。
 あの西の方につっ立っておりましたかすみの山は、ぐっと、こう肩を 落としまして広い裾野を見せておりました。
 それに、あちこちにがけや沼ができ川の流れもかわっていたのであり ました。
 それからかなりの年月、かすみの山は人とのつきあいはありませんで した。
 いつのころからか、『かすみの山』が半分になったとろこから、『半 田山』と呼ぶようになったんだそうであります。かすみの山や、かすみ 山(ざん)ということばは今も北半田に残っております。

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