COLUMN
第13話 黄金千杯朱千杯(こがねせんばいしゅせんばい)
むかしむかしのことでありました。
高館山、産ヶ沢川のほとりに今も残る赤館城跡。
ここは、伊達の睦合の地でありますが、代々、伊達家の居城として一
円に勢力を張っていた由緒あるところとして今に伝えられております。
このあたり一帯はですから、そのむかしは、いろいろなたてものがあ
り、また、いろいろな仕事をする人がたくさん住んでいたわけでありま
す。
この高館山の北側の産ヶ沢川をはさんで、内之馬場のうしろにある丘
の一帯を輪王寺山といいます。
そのふもとに、蘭梅という小字(こあざ)があります。
そこにひとりの年寄りが、小さな小屋にひっそりと暮らして居りまし
た。
ある夜ふけのことでありました。
「オーイ。オーイ。」
と誰かを呼ぶような声がしてまいります。あまり気味のいい声ではあり
ません。
声のきこえてくる方向はまぎれもなく男で、それは、はるか向かいの
赤館城からであると思いました。
じっと耳をすましておりますと、
「オーイ、オーイ。きっこえっかあ。
黄金千杯、朱千杯。
三つ葉うつぎの下にある。
早ぐ来てえ、掘ってみろー。」
と聞こえて来たのでありました。
その声の主ははたして何者であったのでありましょうか。
年よりは、おっかなくなってブルブルとふるえて、その夜はとうとう
寝つかれませんでした。
「化げものだったべが。怪物だったべが。まものだったべが。」
と心に思いましたが、人には決して語りませんでした。
そのうち、年老いはめっきりとがおって(※1)まいりました。母屋か
ら家にもどって養生するように言ったのですが、
「どうせ、間もなぐだ。おれはこごで死ぬ。」
といって動きませんでした。
『オーイ、オーイ。」の声は、年よりにしか聞こえなかったのであり
ます。いよいよ、この世の終わりという朝に、家の人がそろったところ
で、
「実は、おれは、こういうこどば聞いでがら、あんべえ悪ぐなっちま
った。何あんだが探してみでけろ。」※2
と言って、その夜に息を引きとったのでありました。
その不思議なことばのなぞは、今も解けないで残っているのでありま
す。
※1 がおって=弱って ※2 あんべえ悪ぐなる=ぐあい悪くなる
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