COLUMN
第23話 生き血のでる大がや
むかしむかしのことでありました。
そのころは、この桑折はおろか、伊達、いや福島もふくめまして、伊達の一族がた
いへんな勢力をはっておりました。
伊達家の家来が、坂町の観音さまへ、ご主人の政義さまとまいりました。
ねんごろにおまいりをいたしまして帰りみち、道のわきに長さ一尺ばかりのかやの
木が落ちておりました。
家来は、それを観音さまの近くにさして帰ったのでありました。ところが、そのか
やの枝は、まもなく根つき、ぐんぐんと大きくなってまいったのでありました。
それは、坂町のあたりの人がみなびっくりするぐらいの育ち方であり評判になりま
した。
ところが、それを植えた家来はどうしたことか、体が悪くなり、手当てのかいもな
く亡くなってしまったのでありました。
ご主人の政義は、あわれに思いまして、なきがらを、日ごとに育つかやの木の下に
埋めてやったのでありました。
かやの木は、まるで、何かにとりつかれたように、ぐんぐんとのびていきました。
その勢いはおそろしいほどでありました。
それから何年か経ったころでありました。かやの実が実っていたといいますから秋
だったことはまちがいありません。
政義が例によって観音さまにおまいりし、かやの木の墓じるしにもまわりまして手
を合わせて帰ろうとしますと、六・七人の悪人どもがおそいかかって来たのでありま
した。
「あわや。」
と思われましたが、かやの木がたてになってくれましたので、あやうく難をのがれる
ことができたのでありました。
多分、忠義な家来が、ご主人を守ってくれたのであろう。ということでありました。
かやの木は、それから何十年もののちには、しげりにしげりました。
近所ではじゃまにする者も多くなりました。吉兵衛もそうでありました。
ある日、大きなのこぎりを持ってかやの木にのぼり、枝を切りはじめました。
ところが、半分ごろまで切りますと、そこから、まっ赤な血が出て来て、おりから
降って来た雪を赤くしたのでありました。
吉兵衛、あまりのことにおどろき、枝からたたきおち、したたか腰を打ってひどい
目にあったのでありました。
「あのかやの木には人の血がかよっている。」
それからというもの、大がやに手をかける人はいなくなったのでありました。
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